【怖いけどいい話】西日本の村の行事

先日体験したばっかりの霊体験。

自分の実家は西日本の漁村だ。

正直田舎、それもかなりの。

 

ご先祖様の霊魂をお迎えし、

また送り出すという盆の行事も勿論普通に行われてる。

 

うちの村の場合なんだが、

海岸から沖に向かって防波堤が伸びてて、

この一番先に門

(と言っても大人が屈んでくぐれるくらいの木枠)

をこさえて、

その門から毎年8/7に霊魂を迎える。

 

防波堤は岩を敷き詰めて作ったもので、

盆の間は魂の通り道になるから、

生きた人は近づいちゃいけないことになってる。

8/8から8/14までは、

その海の目の前にある寺の墓に、

行燈を持ってお参りをする。

 

行燈の灯りを頼りに、

ご先祖様が無事にうちに帰ってくるように、

ってやつだな。

 

8/15になると、

その年初盆の故人の身内や仲間だけ、

防波堤の門の脇から行燈や木製の小さな船を海に流して、

御霊を極楽に送る、

とまぁ概要はそんな感じ。

 

で、今年はうちの祖母の初盆だったから、

自分も8/7にいったん帰省して、

その行事に参加したんだよ。

 

砂浜から防波堤の先端にある門の方向を向いて住職が経を唱え、

村の人間は目閉じて手合わせて一生懸命拝む。

……んだが、

自分は経なんて読めないし、

夕暮れ前の西日がすげー暑いし、

しかも蚊がめっちゃいるという最悪な環境で、

じっとしてろって無理だろって感じだった。

 

南西の向きに防波堤が来る位置にみんな集まってて、

夕日が門の向こう側からさしてる。

まぁなかなか絶景なんだが眩しい。

 

目を細めてそっちを見てたんだよ。

そしたら、門の横に人が見えたんだ。

逆光だから黒っぽいシルエット。

どうもスカートを履いてるようで、

門より頭一つ分程背が低い。

女の子だ。

 

おいおい、だめだろ、そこに立ったら。

防波堤に近づいたらダメなルールだろ?

子供でも怒られるって。

 

と思って周りを見回すが、

みんな拝むのに必死で誰もそっちを見てない、

というか気づいてないっぽい。

 

正義感の強い自分は、

隣にいた母親にちくるわけだ。

ちょっとお母さん、

あれ見てよ、と。

 

怪訝そうにそちらに視線をあげる母。

な?とドヤ顔の自分。

眉間に皺を寄せる母。

満足げに再度門に視線を預ける自分。

……あれ、いない。女の子、

いなくなってた。

 

門の付近を何度も目を凝らしながら探すが、

やっぱりいない。

もしかして、

これはもしかしてというやつか……?

 

母は「真面目にせぇ」と呆れて呟いた後、

また念仏に没頭していった。

 

諦めきれない自分は

その女の子を視線で探し続けた。

 

そしたら、

その子が防波堤と砂浜の付け根辺りにいたんだ。

 

なんだ、やっぱりただの悪戯か……

ってちょっとがっかりした。

 

その防波堤なんだが、

今時のコンクリ造りのものではないから、

正面から見ると、

~海~/ ̄\~海~

こんな感じになってるんだよ。

蒲鉾みたいな形。

 

で、自分らは、

→/ ̄\ →

の方から見てるんだ。
だから反対側の斜めになってるところは

死角になる。

 

その子はそこを伝って、

こっちに戻ってきたんだろうって思ったんだ。

 

経が終わるまでじっとその子を見てて、

終わってから母に

「さっきあの子が門のところにいたんだ」

って言ったんだが、

母は、はいはいって感じで、

相手にしてくれなかった。

 

次の日から自分はまだ仕事があったので、

その日はそれで今住んでる街に戻って、

それからまた地元に帰ってきた。

それが8/14。

 

その日の墓参りは自分が行くことにした。

行燈を墓の上に乗っけて、

線香を立てて、

花に水やって……

って作業自体は5分もかからん。

 

誰か知り合いでもおらんかと思ったが、

いるのはじい様ばあ様ばっかり。

 

で、その寺なんだが、

墓全体が左側に見えて、

例の儀式をやる海岸が右側に見える位置に、

ベンチと灰皿がある

簡単な休憩所みたいなのが

備え付けられてるんだよな。

 

だから、自分もそこに座って、

自分ちの行燈と海を交互に眺めながら、

煙草を吸ってたんだ。

 

そしたらさ、

8/7に門のところにいた女の子がいるんだよ。

 

戦争で亡くなった人の墓ってでかいだろ?

そのでっかい墓の陰に

隠れるみたいにしてしゃがんでんの。

 

かくれんぼか?って思ったんだが、

その子くらいの年齢の子供って

ほとんどいないんだよな、この村。

 

自分が子供の頃ですら、

近所に同じくらいの年の子供なんて

5人いたかなって感じだったし、

20年以上経った今なら

もっと少ないのかもしれん。

 

しかも盆のこんな行事だ。

自分も子供の頃は

ほとんど参加したことはなかった。

 

だから、あの時浜でも

子供はあの子しか見かけなかったし、

その時もあの子しかいなかった。

 

たぶん家族に連れてこられたんだろうが、

暇を持て余してんだろうな。

 

遊んでやろうかな、

と思ったんだが、

その後すぐに住職が来て、

立派になったなぁとか、

今どこに住んでるとか話しかけられて、

機会を失ってしまった。

 

その帰り際に、

あの子どこのお子さんですか?

って住職に聞いた。

まだその子は

でっかい墓の脇にしゃがんでたから。

 

そしたら、住職がそっち見て、

あぁ……ってちょっと嬉しそうに笑ってから、

「あの子は、●●さんとこのお嬢さんやで。

こないだこっちに帰ってきたんやな」って。

 

自分は●●さん知らなかったんだが、

帰ってきてるってことは、

●●さんとこも都会に出てるんだろうな。

 

そこの子供なら、

ここの風習も知らないだろうし、

門に近づいても仕方ないわな。

 

だから住職には、

その子が門に近づいてたことを

黙っといてやることにした。

 

帰ってから母に、

「あのとき門の所にいたの、

●●さんとこの娘さんだったみたい」

って言ったら、

母も「あの子も帰ってきてんね」

って嬉しそうにしてた。

 

で、次の日。

うちの祖母も極楽に行ってもらわにゃならんので、

お送りする行事はちょっと真面目に参加した。

 

浜についたときなんとなく周りを見回したが、

●●さんとこのお嬢さんとやらは

どうも今日は来てないみたいだった。

 

まぁ色々やってから

行燈流して無事終了。

 

今年はどうやら風も波もいいみたいで、

うちの祖母の行燈も、

他の1軒分の行燈も、

途中で沈むことなくどんどん沖に流されてった。

 

帰り道母親がめちゃ上機嫌でさ、

どうしたん?って聞いたんよ。

 

そしたら、

「おばあちゃんも、●●さんとこのお嬢ちゃんも、

ちゃんと極楽に行けたから」って。

 

春に、交通事故で亡くなってたらしいわ、その子。

盆で帰ってきてたんだろうが、

当たり前に霊が存在するうちの村って、

ちょっとすげぇって思った。

 

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