【怖い話】消えたAちゃん

小学生の頃にAちゃんという

同級生がいた。

 

俺は同じクラスになったことないんだが、

当時すごく珍しかった

ピンクのランドセルを学年で

唯一背負ってて、

(俺は今20代後半)

学年に150人くらいいる中で、

入学式から目立ってる子だったから、

かなり早い段階で

『○組のAちゃん』

として有名だった。

Aちゃんが有名だったのは

ランドセルだけじゃなくて、

ものすごく変わった子だったのもある。

 

運動神経がすごく良くて、

50m走は4年生に匹敵するくらいの

速さで走るし、

入学直後から、

昇り棒のてっぺんまで

スルスルと昇って行ってしまう。

 

そして、そのてっぺんで

空を見上げながらポエムを歌う。

 

でも勉強は、できるできない以前の問題で、

ピンクのランドセルの中には

いつも教科書は入っておらず、

兄弟のゲームの攻略本などを持ってきては、

「わたし、○○(キャラ名)が好き~」

とか言いだしたりしていた。らしい。

(同じクラスじゃなかったので友達に聞いた)

 

字もいつまでたっても上手くならず、

3年くらいに見かけた時には、

鉛筆をクレヨンみたいな持ち方しながら書いていた。

 

小学校のテストなのに、

10点などが当たり前だった。

 

今考えると、

発達障害とか

そういうものだったんだと思う。

 

話し方が全部台本を読みあげてるみたいというか、

棒読みな喋り方をする子だった。

 

男子も女子も関係なく、

学年のみんながAちゃんと呼び、

「あの子はああいう子」

という独特な扱いをしていた。

いじめとかはなかった。

 

好きになった男子には

ストレートに好意を表すので、

ちょっと嫌がられることはあったけど。

 

4年生の時にAちゃんが転校した。

理由は普通に親の都合で、

関東から関西に引っ越すことになったのだ。

 

さすがに「あいつなんであんな馬鹿なの?」という、

冷めた見方が出始めた年頃だったのもあり、

Aちゃんの引っ越しを喜ぶ連中もいた。

それからしばらく、

Aちゃんはネタキャラになった。

 

「A追っかけて引っ越せよ~」とか、

「夜にAがくるぞ~」とか。

 

そんなブーム?も半年せずに消え、

Aちゃんは皆の記憶から消えた。

 
5年生の冬、阪神大震災があった。

人生で初めての、

テレビがそれ一色に染まる怒涛の報道に、

みんな子供ながらに

この世の終わりだと興奮してた。

 

そのまたすぐ後に、

さらに世間を騒がす最悪の事件。

 

悲しいかな、

関東の俺たちの中では

阪神大震災は遠い記憶になってしまってた。

(被災者には申し訳ない)

 

数ヵ月後、

進級して6年になった俺たちの学年の中で、

ある噂が流れた。

 

Aちゃんが、

阪神大震災で亡くなったらしい。

 

そういえば関西に行くって聞いていたし、

詳しい地名(神戸)も聞いていたのだが、

Aちゃんの転校当時は、

神戸がどの辺にあるのか

あまり把握してない奴も多くて、

震災当時には誰も気がつかなかった。

 

Aちゃん死亡のソースは、

俺たちの学年の1組の担任で、

Aちゃんを受け持ったこともある先生だった。

 

遠い出来事になっていた震災だったけど、

顔見知りがそれで亡くなったというのが、

当時の俺たちにはショックで、

あんなにネタにしていたことも

ちょっと反省した。

 

それからAちゃんのことについては、

学年の誰も口にしなくなった。

 

それから俺たちは中学に入学した。

うちの中学はよくある△△小→△△中という感じで、

そのまま持ちあがる感じだったので、

顔ぶれもほとんど変わらず、

他の小学校から

少数混じってくるのが

一部の新顔という構成になる。

 
そんな奴らとも馴染んできた

中2の1学期、

△△小の奴らの間でまた噂が流れた。

 

「Aちゃんが生きていた」と。

なんでも、AちゃんがB男宅に、

「B男くんいますか?」

と訪ねてきたんだという。

 

B男は不在だったので

母親が対応したらしいのだが、

特徴や母の口真似が

Aちゃんそのものだったらしい。

 

B男とは、Aちゃんが入学当初から

好きだと言っていた相手で、

AちゃんはB男にフラれる

C也を好きになる

B男を好きになる

フラれる→D太を…

 

というふうに、

 

恋のプラットホームのように

好意を抱いてた奴だった。

 

そいつの所に死んだと言われた

Aちゃんが現れるというのが、

なんともホラーだったんだが、

元△△小生の奴らは逆に笑ってしまった。

 

小学生の当時でも、

AちゃんがB男の家に

押し掛けることはさすがになかったし、

そもそもB男は

中学上がったくらいのころに、

学区内の一軒家に引っ越したんだ。

(色々事情があって、

B男の引っ越しは学年中が知ってた)

 

B男は中学から私立に行ってしまって、

ほとんど地元にいないので、

「俺たちに忘れられたくないんじゃね?」

とか適当な話で消えてしまった。

そんな感じで夏休みに入り、

2学期が始まると、

元△△小の奴らは凍りついた。

 

Aちゃんが2組の転入生として現れた。

同姓同名で、

見た目も俺たちと同じように成長した、

正真正銘のAちゃん。

 

転校当日は、

元△△小の奴らが2組に集まっては、

Aちゃんの姿を確認に来た。

 

なんだよ、生きてたんじゃん!

 

俺たちのショックは

なんだったんだと半分脱力したが、

同級生が生きてたというのは、

まあ普通にいいことなのと、

あの時に死亡発言した先生も異動してて、

問い詰める手間を

とるほどでもなかったので、

俺たちはAちゃんを普通に受け入れた。

 

Aちゃんの運動神経・変わった性格は

そのままだった。

 

強いて言えば、

昔はきゃぴきゃぴとうるさくて

賑やかだったのが、

少し大人しくなっていたのと、

好意をストレートに表すのをやめていたくらい。

 

その頃モー娘。

が流行っていて、

ダンスを完コピして

一人で廊下で踊っていたAちゃんが、

周りに人が集まり始めたのを見て、

「や、やばい。視聴率があがってきた」

と言っていたのをすごく覚えてる。

 

元△△小の奴も、

転入によってAちゃんを知った新参組も、

中学を卒業するまでの1年半、

Aちゃんのことを微笑ましく

(ちょっと生ぬるく)

見守っていた。

 

Aちゃんは県立のZ女子に

進学が決まった、

と記憶している。

 

記憶しているというのは、

Z女子校の性質が

Aちゃんにぴったりだったので、

噂で知った時に、

友達とエライ納得した覚えがあるからだ。

 

数年経って、

俺たちは成人式を迎えた。

 

この成人式に合わせて、

△△中の同窓会をしようということになり、

かなりの人数が集まった。

 

当時の2/3くらいの

人数が集まったと思う。

 

また、そこに中学から

私立に行ってしまった奴らも合流し、

B男と久しぶりの再会となったことから、

Aちゃんの話になった。

 

Aちゃんはその同窓会にはいなかった。

B男は、Aちゃんが転入してくる前の

あの訪問は本当だと言い張ったので、

誰かが「Aちゃんに連絡をとろう」

と言いだした。

 

ところが、

誰もAちゃんの連絡先を知らなかった。

 

連絡先がわからなければ

誘えないのは当然なので、

もしかしたらAちゃんは、

この同窓会自体

知らなかったのかもしれない。

 

話の矛先は、

Aちゃんと同じく

Z女子に行った女子たちに向かった。

 

「Aちゃんて今どうしてんの?」と。

そしたら、どの女子も

「知らない」という。

 

「冷たいなー」と俺たち男子が責めると、

その女子たちは、

「Aちゃんはうちの高校じゃなかった」

と口々に言い始めた。

 

「え?」

ちょっとびっくりして聞き返したが、

どのZ女子生も

「AちゃんはZ女子で一度も見かけてない」

と言った。

 

そもそも、

Aちゃんが同じ高校に

来る予定だったことすら初耳だと。

 

俺と友達が勝手に

勘違いしたのかもしれないと思ったが、

AちゃんがZ女子に行ったと思ってた奴は

他にも大勢いたので、

どっかからそういう認識は

広まってたんだと思う。

 

でも当のZ女子生は、

全然Aちゃんの卒業後を知らなかった。

 

まさかAちゃん、

卒業後に登校拒否にでもなったのか?

という話になったところで、

中学の新参組だった奴らが

口を開いたんだ。

「Aちゃんて誰?」って。

 

「いやいや、Aちゃんだよ?」

と確認するが、

そこにいた新参組のやつ全員が、

Aちゃんの記憶がないと言い始めた。

 

廊下で踊ってた話とか

特徴的な口真似をしても、

全く覚えがないという。

 

それから同窓会は、

Aちゃんについての

討論会になってしまったのだが、

俺たちは中3の時、

Aちゃんが何組にいたのか、

何部にいたのか

思い出せなくなっていた。

 

Aちゃんについて覚えてる奴らは、

Aちゃん個人の記憶が強すぎて、

同じクラスだったのか

違うクラスだったのかも

わからなくなってしまってた。

 

最終的に、Aちゃんの進路はもういいから、

どのクラスにいたかだけでも

確認しようということになり、

誰かが「卒業アルバムを持ってくる」

と言いだして家まで走った。

 

Aちゃんはどこにもいなかった。

登校拒否だったやつの写真も、

途中で病気で亡くなった

女子の写真もあるのに、

Aちゃんの写真だけは

アルバムのどこにもなかった。

さすがに寒気がした。

 

確か、あのあと学年いちのムードメーカーが、

空気を変えようと頑張ってくれた。

 

ぎこちなさを残しつつ、

最終的には成人バンザーイと

騒いで翌朝に解散した。

 

俺はしばらくして

自分のアルバムをみたけど、

同窓会で見たアルバムと同じように

Aちゃんの姿はなかった。

 

小学校のアルバムにもAちゃんはいない。

関西にいたんだから当然だ。

 

だが、Aちゃんは確かにいた。

転校して、中学の真ん中辺で

戻ってきたはずなんだ。

 

「や、やばい」のくだりは、

当時俺たちの中で流行って、

家族にも話したくらいだ。

 

俺の妹もその話を覚えていたんだ。

なのに、Aちゃんがいたという形跡が

なぜかない。

同窓会の後、

俺は大学だ就職だで、

ほとんど中学時代の奴らと

連絡はとってない。

 

連絡とってる数少ない奴らとの間にも、

Aちゃんの話は出ないし、

他の奴らの間でも、

タブーになっているみたいだと

いつだか聞いた。

 

あの同窓会から5年以上も経っている。

すっかり忘れてしまっていたが、

Aちゃんについては

まだ誰も口を開いていないんだろうか。

 

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