【怖い話】古着屋の穴

前に叔父から聞いた話を

紹介したいと思います。

 

おそらく二、三十年前、

叔父が様々な地方を巡って仕事をしていたころ、
ある地方都市で一週間、

ビジネスホテルで生活しながら

働くことになった。
叔父はそのホテルの近くに、

変わった古着屋が建っているのを見つけた。
そこは一階が古着屋、

中の階段を上がった二階が

レコード屋になっている店で、
二階に中年のおじさん、

一階に若い店員がいたという。
店の雰囲気から、

中年のおじさんの方が

二つの店の店主らしい。
どちらも古びた洋風の内装とやや暗い照明で、

扱っている品とはギャップのある、
レトロというより

アンティーク調の

不思議な雰囲気を出していたという。
そこの店では、

叔父の好きな

六、七十年代の洋楽がいつも流れていた。
有線か、店主が趣味で編集した

テープを流しているのだろうと叔父は思った。
叔父は古着に興味はなかったが、

レコードと店の雰囲気で通っていた。
叔父は仕事の最終日に、

レコードでも何枚か買っていこうと思い、

夜その店に行った。
店に入ると、

今日並べたばかりらしい

古びた感じのジャケットが売られていた。
普段そんなものを着ないはずの叔父は、

何故か妙に惹かれてそれを眺めていた。
ちょうどその時、

聞き覚えのある音楽が流れてきた。
しかし、叔父は

その曲の名前が頭に浮かんでこなかった。

(聞いてみると、

「ブッチャーのテーマが入ってたやつの南国リゾート風の曲」

と言っていたので、
多分ピンク・フロイドの『サン・トロペ』)
叔父は少し悩んだ後、

上のレコード屋で確認しようと

階段に目を向けた。
すると、階段の横の壁に

見たことのない穴が開いていた。
床から少し上の所を、

爪先で何度も蹴って開けたような

でこぼこした横長の穴だった。
叔父は一瞬戸惑ったが、

普段はそこに段ボール箱が置いてあるので

分からなかったことに気付いた。
しかし、何故壁を直さずに

段ボール箱を置くだけで済ますのか。
不思議に思いながら階段へ行こうとした時、

穴からノソッと何か出てきた。
叔父には最初、

変な生き物に見えた。

 

よく見るとそれは、

手のようなものだった。
穴から手首の先だけ出して、

下に掛かった物を取ろうと

指を動かしているように見える。
しかし大人の手より明らかに大きい。
手は何かの病気のように

気味悪く黄ばんだ色で、

爪も土を素手で掘った後のように

黒くぼろぼろだった。
どの指も太さも長さも同じぐらいで、

親指と小指の区別もつかない。
指の生え方が違うのか、

普通の手より完全な左右対称に見えるのが

余計不気味だった。
また、中指の付け根がちらつくので、

指輪をしているように見えた。
叔父はしばらくそれを見ていたが、

もっとよく見ようと近づくと、

穴の中に消えた。
あまりに変なものだったので

若い店員のほうを見たが、

怪訝な顔をされた。
ちょうどそこに、

何か用があったのか

2階の店主が階段を降りてきた。
店主に今見たものを知らせようと、

声をかけて穴を指さした時、
穴から指が二本伸びてきて、

ぴくぴくと指先を曲げながら

左右にゆっくり揺れていた。
こちらを窺うような、

虫の触覚の様な不気味な動きだったという。
しばらくその動きを続け、

自分のすぐ横にいる階段の途中の店主を向くと、

指はまた穴に戻った。
さすがに気味が悪くなった叔父は、

それ以上何も言わず入り口に向かった。
その直後、

「お前箱どうした!」

という大声に驚き振り向くと、
店主が階段で穴を睨んだまま、

若い店員が慌てた様子で

段ボールを穴の前に置きに行くのが見えた。

 

「あの手のことは、

店主しか知らないみたいだった。

普段は穴塞いでるから油断したんだな。

しかし、段ボール箱一つで穴塞げばどうにかなるものかなあ、

結構でかかったんだけどな。
でもあの手より、

箱置いて済ませて、

客の俺に説明も弁解もしない

あの店が一番怖かったな」
と叔父は笑って語っていました。
叔父は今でもその店があるのか

気になるそうです。

 

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