【ゾッとする怖い話】オカルト好きな友人

大学時代友達だった奴が体験した話。

そいつ(仮名N)とはオカルトサークルの飲み会で

出会って意気投合した。

 

怖い話が好き程度の俺と違いNはホラー映画や

小説にも詳しく話を聞いてるだけで楽しかった。

 
結局俺はそのサークルには入らなかったが

Nとの付き合いはその後も続いた。

Nは入り浸ってるネットの怪談投稿掲示板を教えてくれて

俺もよく観るようになった。

 
Nも時々投稿しているらしかったが

どれかは教えてくれなかった。

俺は主にロム専だったが

一度思い切って怪談を投稿したことがある。

 

割と好評だったから嬉しくてNにあれは俺だと明かしたら

「話運びが辿々しい」

「描写が甘い」

と散々ダメ出し食らって

うんざりしてしまい二度と書かなかった。

 
Nは他人の投稿を厳しく批判するのが常だった。

もちろんそれは並々ならぬ読書経験に

裏打ちされていて傍から見てももっともなことが多かった。

 
Nに同意する書き込みもあり

特におかしいとは思わなかった。

やがて最初の夏休みになって俺は

九州の田舎にひと月ほど帰省した。

 
その間Nとはたまにメールしていて掲示板もよく見てた。

お盆を過ぎた頃、掲示板に変化が表れた。

 

投稿に対して驚くほど敵意剥き出しのレスがつき始めたんだ。

主旨はまあ妥当かなと思ったんだがとにかくきつくて。

これまさかN?とメールで聞いたがそれは否定された。

 
しかしその日以来誰かの過激な批判レスは続いた。

初めは反発もあったんだけど逆に支持する奴も出てきて、

一週間もすると一つの投稿に対して

複数の過激な批判レスがつくのが常態化しだした。

 
俺はこのままじゃマズいと思い

Nにメールしたがあいつはどうも反応が鈍かった。

自分でも色々と書き込んでみたが流れを変えられず、

掲示板の雰囲気は殺伐としたものになっていった。

 
休みが終わり、大学で久しぶりにNと再会した。

俺は自分から掲示板のことを持ち出し

このままじゃヤバいと言った。

 
しかしNはこれで良いと言った。

批判によって投稿のレベルが上がりよりよい掲示板になると。

投稿が減ってきているとも訴えたが、

過渡期だから仕方がない。

いいものが残ればいいと言うだけ。

 

俺は愕然とした。

内心の疑惑がはっきり形になった。

過激な批判を始めたのはNだったんだ。

 
そう悟って以来、

Nと会うことが少なくなった。

掲示板は投稿ががくんと減り、

たまにあったかと思えば

待ち構えていたように

批判レスがバンバンつくといった有り様だった。

 
この頃になると内容がただの誹謗中傷だったり

何でも当てはまるような曖昧な文言だったりするものも多く、

いわゆる荒れた状態だった。

 
俺は楽しい遊び場を

Nに奪われたようで腹立たしかった。

 
疎遠になったまま秋が深まり、

大学祭が近づいてきた。

 

スタッフだった俺は忙しく動き回っていた。

ある日の夜チラシを作るためにPCルームへ行った。

入室して見渡すとまばらにいた人の中にNがいた。

 
何やら一心不乱にキーボードを打ち込んでいる。

横顔がひきつっていた。

俺はわざと後方からそっと近づいていきNのPCの画面を覗いた。

 
掲示板に書き込んでいる最中だった。

バカだの死ねだのといった単語やwの連なりが見えた。

俺は背筋が寒くなり、

そのまま退室した。

 
大学祭も終わり寒くなり始めた頃、

Nを見掛けなくなった。

週2、3コマ被ってる講義にも来なくなった。

共通の知り合いに聞いても最近連絡を取っていないとのこと。

 

少し気にはなったがメールはしなかった。

掲示板も見なくなっていた。

そのまま年が明け、

後期試験も終わり春休みが始まるという2月初め。

Nからメールがきた。

会ってくれないかという。

 
今更なんだと思ったが、

メールを返さないでいると電話までかかってきた。

よく判らないがとにかく切羽詰まった様子だけは伝わってきて、

承知してしまった。

 
翌日大学近くの喫茶店で会った。

およそ2ヶ月ぶりに見るNは

げっそりやつれていてしょぼくれて

ザ・不健康て感じだった。

 

開口一番、Nは言った。
「変な夢見るんだ」

「はあ?」

「出てくるんだよ。山なんだ。ずっと道が続いて。それで俺、今にも」

「ちょっとちょっと! 意味が判らんて。一体どうしたんだよ。ちゃんと説明してくれ」

 

俺が言うとNはおもむろに水をガブリと飲んだ。

そしてしばし俺を見つめて、

さっきとは打って変わってささやくような声で訊いた。

 

「お前まだ掲示板観てるか?」

「いいやもう長いこと観てない」

「観てくれないか」

「……別にいいけど」

 

久しぶりの掲示板は相変わらず荒れていて見るも無惨だった。

「開いたよ?」

「しばらくログを遡ってみて。12月半ばくらいまで」

 

誹謗中傷や下らない下ネタが視界を流れていく。

やがて12月に入った。

 

「来たぞ」

「そこに話があると思うんだ」

「何て話?」

「山でドライブしてたらとかいう出だしの……」

「ちょっと待ってね……ああ、あった」

「それ読んでみて」

話の内容はこうだった。
夏に友人たちとドライブしていたとき起こった話。

行ったことのない他県の山の中を当てもなく走っていた。

緑が鮮やかで風が心地よかった。

野郎ばかりなのに歌まで歌い出したりして。

同じような曲がりくねった道を行くこと数十分。

あるカーブを曲がったとき一人が声をあげた。

 

「あ、何あれ!」

少し先に待避所みたいなスペースがあってそこに妙なものがあった。

「ガラス張りの……部屋?」

「やけに細長いけど」

「行って見ようぜ」

俺たちは待避所に車を入れて降りた。

それに近づく。

「床屋?」

俺はつぶやいた。

透明な外壁の全長10メートルほどの部屋の中に

理容椅子と思しきものが4脚ほど並んでいる。

人の姿は見えない。

向かって左端に手押しのドアがあった。

 

「へーこれすげえじゃん」

お調子者の一人が駆け寄って行った。

俺たちもぞろぞろついていく。

 

ドアはあっさり開いた。

中にはレジカウンターやロッカー、

シャンプー台などがあり明らかに理髪店のようだった。

空調が作動してる様子はなかったが不思議と暑くはなかった。
「ちょうどいいじゃん。みんな座れよ」
お調子者が言うなり一番手前の椅子に座ってみせた。
誰もいないし俺らも座ってみた。

正面に車の通らない車道が見える。

セミの声。

小鳥の囀り。

しばしボーっとしていた。
「はっ」
不意に目が覚めた。

いつ眠ってしまったのか。

思わず椅子から立ち上がった。

外はまだ明るい。

他の連中はまだ寝ている。
「おい……おい!」
起こすと皆ぼんやりとして周りをキョロキョロしながら立ち上がった。
「何で寝たんだろ」
「何か気持ちいいんだよな。さすが床屋の椅子だけある」
俺らは外へ出た。

むわっっと熱気が肌を撫でてくる。
「結局何なんだろうな」
車に戻りハンドルを握ると

助手席に座りながら訊いてきた。
「期間限定とかじゃね。で昼休みに買い出しに行ったとか?」
後ろで寝そべったお調子者が言う。
それぞれ勝手なことを言いつつ

その後はファミレスでだべった後TSUTAYAに寄って、

夜10時頃、俺は家に向かって一人車を走らせていた。
ふとルームミラーで何かが動くのが見えた。

後部座席に誰かいる?

俺は思わず路肩に寄せて後ろを確認した。

何もいない。
「びびらせんなよ~」
わざとらしく独り言を言いながら帰宅した。


「読んだけど」

「その後のレスも観てくれ」

ログをスクロールしていく。

 

例によって批判というより中傷に近いレスが続いている。

曰わく

「オチがしょぼ過ぎ」

「地名ちゃんと書け」

「セリフが不自然」

「カス」

「死ね」etc.

 

Nのものらしき長文の批判もある。

不必要な煽りや罵倒を除いて要約すると

「山の中にガラス張りの床屋なんてある訳ない。リアリティがない」

という感じ。

 

「この長文お前だろ?」

「その後も読んで」

「後もっていつまで……」

 

言いながらログを追っていくと画像が貼ってあった。

文章はなし。クリックする。

雑草だらけの中に透明な部屋があった。

理容椅子が2脚ばかり並んでいる。

「あ、床屋の画像があるじゃん」

「それだよ」

「語り手が証明のために貼ったってこと?」

「判んないけど、それで俺、謝れば良かったんだけど」

Nらしくない弱気なセリフに少し驚いた。

掲示板に目を戻す。

画像に対して不気味がるレスがいくつかついていたが、

その後にまた長文で貶めるレスがあった。

Nだろう。

 

今度はほぼ中身のない悪口だった。

明らかに引くに引けなくなりムキになっているぽかった。

しかしそれ以降は広がらず、

また別の投稿がなされそれに対する口撃にシフトしていた。

 

 

「一通り読んだけど」

「その時はすぐ忘れたんだ。でも先週になって突然夢に見るようになって」

「さっきの山道の夢ってこの話に出た山道ってこと?」

「多分そうなんじゃないかと思う。車に乗って走ってるんだ」

「お前が運転してんの?」

「その辺がはっきりしないけど多分違う。後ろに乗ってるぽい」

「他に誰か乗ってんの?」

「うん。そんな気配がする」

「それ投稿者ってこと?」

「そんなん知るかよ。で、ずっと緑の山の中を走ってるんだ。」

「カーブばっかり?」

「そうそう。同じような感じの連続なんだけど……」

「だけど?」

「判るんだよ。近づいてるのが」

「ガラス張りの部屋に?」

「ああ。もうすぐ……ここ曲がったらあれが姿を現すんじゃないかって。

そしたらたまらなくなって車から飛び降りたくなって。

でも体は動かなくて。掴まれてる感じもあって」

「何日も観てるのか?」

「毎日じゃないけどもう5回くらい観た」

Nは小刻みに震えているようだった。

見開いた目が血走っている。

「徹夜したのか」

「今夜辺り着いちゃうんじゃないかと思ったら眠れなくて」

「呪いとか? とりあえず謝った方がいんじゃね」

「謝罪レスはした。でももう手遅れぽくて。その後も止まらないし」

その後もNは己の恐怖を切々と語っていたが

俺にはとんと実感はなかった。

Nが今夜一緒に居たがる感じなのを振り切って別れた。

 

正直信じてなかったし、

俺に会いたくてでっち上げたんじゃないかとすら疑っていた。

それでも帰宅してシャワー浴びてさっぱりしてみると、

ちょっと気分が変わって少し真剣に考えてみようかと思えてきた。

 

例の話をもう一度読み直してみる。

確かに後部座席で動く影を観ただけなんてしょぼすぎるオチだ。

しかし……。

何度か読み返していると何やら違和感がある。

どこかおかしい。

 

気付いた時思わず声が出た。

 

話の登場人物がどうやら終盤で1人減っているのだ。

断言は出来ないが、

そう取れるような叙述がなされている。

最後のくだりもこのことを暗示していたのでは……。

 
これが本当のオチだったのか。

Nも他の誰も気付かなかった。

だから……?

 

考えがまとまらないままとにかくNにメールして伝えた。

Nからはすぐ返信がきて、

すぐ掲示板に書き込んで欲しいと言ってきた。

 

お前がやれと返したら、怖くて無理との返事。

正直面倒だったが乗り掛かった船だからと書き込んでやった。

ロムってたらしくすぐ御礼メールがきた。

 

それからNは例の夢を観ないようになり

元気を取り戻したようだったが、

結局疎遠になり2年に上がってからは

講義も被らず没交渉になってしまった。

 

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