友人の話。
瀬戸内の小島に遊びに行った時のこと。
小高い山に蜜柑畑が連なっており、
ひなびた雰囲気が好きな彼は、
その中をのんびりと歩いていた。
内海が一望できる開けた場所で、
荷物を枕に昼寝を始めたそうだ。
ふと気がつくと、
彼の傍らで痩せた犬が一匹、
尻尾を振っている。
頭を撫でてやると、
犬は彼の手を舐めて鼻を鳴らした。
匂いを一頻り嗅いだ後、
安心したように彼の側で横になる。
一人と一匹でそのまま転寝を始めたという。
目が覚めた。
数時間も寝たろうか。
大きく伸びをして横を見ると、
犬の姿は見えず、
代わりに別の物が目に入った。
犬の白骨がすぐ横で、
半分土に埋もれていた。
眼窩から伸び出たハルジオンが一輪、
花を咲かせていたという。
なぜか怖いとは思わず、
「犬も寂しかったのかな」
などと考えたという。
骨に手を合わせてから、
山を降りたのだそうだ。
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