知り合いの話。
彼の祖父はかつて
猟師をしていたという。
遊びに行った折に、
色々と興味深い話を聞かせてくれた。
「寒い冬の日にはよ、
氷の張った淵でよく釣りをしたな。
専らワカサギやらオイカワを狙ってたんだが、
時々妙な魚が釣れた。
形は変わってて全体的に丸まっちいんだが、
これが綺麗に透き通ってたんだ。
目玉が一番濃くて、
骨とか腸なんかも薄っすらだが見えてたな」
「コイツがよ、
鍋で煮たら溶けて失くなっちまうんだわ。
影も形も残らねえが、
煮ていた湯には粘りが出て、
確かに魚の味がする。
粘ったのをズルズルと啜ってたんだが、
これが大層美味くてな。
儂らはこの魚のことを、
“氷の魚”と呼んどったよ」
「食った奴らは
儂を含めて皆長生きしとるから、
体には良かったんだろうよ」
そう言って祖父さんはニコニコしていた。
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